「この世で一番の苦痛と罰と、そして幸福を」
「……ああああああ!!!!!!!!!!!」
【それ】は突然現れる。
叫び、嘆き、それは突然に訪れる。
隔離病棟で兄は突然叫ぶ。
「いやだ、行かないでくれ、いなくならないでくれ、いやだいやだいやだいやだ」
特に俺が帰ろうとする時はいつも【こう】だ。
しかし看護師に宥められて、呼吸を落ち付け、約束を取り付ければ、比較的それは早く終わる。
しかし問題は、【何もない時】。
ふとした会話の中で空虚の一点を凝視め感嘆の無い、叫び。
しかし言葉の意味は嘆き悲しんでいる。
呪詛のようにぶつぶつとそれを繰り返し、兄は突然この世の人ではなくなる。
14の時だ。突然の発作にも近いものだった。
兄は一夜にして狂った。
【何も無かったのにも関わらず】
双子の、優秀な方に目を掛けていた両親ではあったが、今ではもう腫れ物扱いのようにこうして病院に預けている状態である。
見舞いに来るのは俺と少し年下の妹のみ。
「──で、兄はいつよくなるんですか」
「そう言われてもねえ。原因も理由もわからない。類似の症状はあれど、平時のお兄さんは至って健常だからねえ」
あれが?
とても自分にはそうは思えないが、医師から見ればまともな部類のようだ。
あまりにも異常が日常過ぎてこの医師もまた気でも狂っているのだろうか、何せいつも面談すればニヤニヤとしていて気色が悪い。
しかしその理由が、今日判明した。
「ほんとうに、40XX号室の患者と全く同じだ」